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【便秘外来☆連載企画 2009】

地中海型食生活による食養腸

一般的に、脂肪の多い食事は大腸がんを引き起こしやすいリスクのひとつと言われます。

実際、和食中心だった時代の日本において、大腸がんは、ほとんどみられませんでした。しかし、ファーストフードや外食産業が次第に広まり、日本人の食生活が欧米化してきたことにより、脂肪の摂取量も多くなってきました。それにともなって、大腸がんも増えています。「がんの欧米化」といわれるゆえんです。

しかし一方で、日本人よりはるかに脂肪の摂取量が多いスペインのマヨルカ島において、日本より癌の発症率がかなり低かったというデータがあります。これは何故でしょうか。

 

調査によると、マヨルカ島では、オリーブオイルを毎日豊富にとっています。また、パンやパスタを中心とした穀物、魚や野菜、果実をふんだんにとり、肉類や乳製品はあまり食べないという、典型的な地中海型食生活を送っています。

地中海型食生活では、飽和脂肪酸やコレステロールが多く含まれている肉類や乳製品の摂取が少ないため、大腸がんのリスクを下げることができます。

また、ブロッコリーやキャベツなどアブラナ科の野菜をよく食べること、さらに抗酸化物質を豊富に含んだオリーブオイルと一緒にとることが、がんの予防として働いている可能性があるのです。

 

さて、地中海というとイタリアを思い浮かべますが、実はイタリアには大きく分けて「北部・中部・南部」と3つの地域があり、食事内容はずいぶん違います。

同じイタリアでも北部や中部は、寒さや北ヨーロッパの食習慣の影響から、バターや動物性脂肪なども使った、どちらかというとコッテリ系の料理が多くなります。

一方、気候が温暖な南部が中心とする地域では、地中海型食生活を習慣としています。

 

1970年代、この3つの地域でさまざまながんの死亡率の平均値を比べると、多くのがんで死亡率が最も低かったのは南部であるという結果がでました。

腸から少し話はそれますが、中でも非常に差があったのが、乳がんです。大腸がんに比べればまだ不明な点も多く、詳しい研究はこれからですが、乳がん大国のアメリカでは、乳がん予防の食事の研究に取り組む研究者も多く、動物性脂肪を控え、果物や食物繊維をとることの重要性がいわれています。

「地中海型食生活」は食養腸の重要なポイントであるだけでなく、さまざまなアプローチから今後注目されていくことでしょう。

 

 

地中海型食生活とは、どのような食習慣なのでしょうか。

左図はハーバード大学公衆衛生大学院のウィレット教授が「何をどれだけ食べるべきか」分かるようにと発表した「地中海型食生活のピラミッド」です。

私はこれを模して「地中海型和食」を提唱しています。

毎日摂取するものとして「チーズとヨーグルト・オリーブオイル(量は適宜)」の項目を「植物性乳酸菌・ヨーグルト・豆乳・オリーブオイル(量はたっぷり)」と置き換え、クスクスを玄米に置き換えます。食物性乳酸菌は漬物や味噌など植物性の発酵食品や飲料商品などをうまく利用するととりやすいでしょう。

※ 図をクリックすると拡大表示します。

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