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停滞腸って何だろう?

腸は運動する

腸はパイプのようなもの口から肛門まで、私たちのカラダはいわば1本のパイプのようなものです。このパイプで食べたものがきちんと消化・吸収・排泄されることによって私たちは生きていくことができます。

そして消化・吸収・排泄において重要な役割を果たすのが小腸と大腸です。小腸(十二指腸→空腸→回腸)は約5〜7m、大腸(盲腸→上行結腸→横行結腸→下行結腸→S状結腸→直腸)は約1.5mで、あわせるとそのパイプの長さは約9mにもおよびます。したがって小腸、大腸では食事のたびに食べたものを約9mも運ぶ必要があるということになります。

腸の図人間の体が垂直に立てられた真っ直ぐな1本のパイプならば話しは簡単です。上から下へ食べたものは重力に従って移動することでしょう。しかし、私たちのカラダは非常に複雑にできています。小腸はまるで絡み合ったスパゲッティのようです。大腸は下から上へ、右から左へ、上から下へと小腸を囲むように1周しています。このような複雑な道のりで食べたものを運ぶために、小腸と大腸では分節運動、蠕動運動とよばれる運動が行われているのです。つまり、消化・吸収・排泄するためには、この腸の運動がきちんと行われているかどうかが重要になります。

腸の運動が停滞する「停滞腸」

ところが最近、この消化・吸収・排泄するために必要な腸の運動が弱い「停滞腸」を持つヒトが男女ともに増えています。腸の運動が弱くなると、消化・吸収・排泄がうまく行われず、体内には本来排泄されていなければならない不要な老廃物や毒素が長期間溜まることになり、ニキビや肌荒れなどの肌トラブルをはじめ、下腹部の張り、腹痛などの原因になります。

また、このような状態が長く続けば大腸がんのリスクも高くなります。日本人の死亡原因のトップはがんですが、がんの中でも近年特に急増しているのがこの大腸がんです。2003年度のがんの発生部位別にみた性・年次別年齢調整死亡率(人口10万対)をみると、大腸がんは女性では第1位、男性では第4位(厚生労働省「人口動態調査」より)のがんで、がんによる死因の中でも上位にきています。そういう意味からも「停滞腸」を防ぐことは、がん予防の第一歩ということができるのかもしれません。

正常な腸と大腸黒皮症※松生ら, 2002, 『大腸メラノーシスを認める常習性便秘症に対するポリデキストロースの効果』 「日本食物繊維研究会誌第6巻 第2号」 55-60

内視鏡で腸を見ると「停滞腸」の多くは右の写真のような黒い色の状態(大腸メラノーシス)になっていることが多い。

全ての現代人に「停滞腸」の可能性

「停滞腸」の具体的な原因としては、2回食(欠食)、ダイエット、食物繊維摂取不足、運動不足、ストレスなどが挙げられます。特に2回食やダイエットは、食事量の減少に伴い摂取する食物繊維量が物理的に減少するため、ますます腸の動きが悪くなる悪循環の原因でもあります。

これらの原因から分かる通り、「停滞腸」の原因は決して珍しいものではありません。現代人の誰もがいつ「停滞腸」になってもおかしくはないということです。