問診で病気の状態をある程度、推測することは可能です、。しかし、便秘や下痢の背景に大腸がんなどの重大な病気があるかどうかを調べるため、便秘外来では、腹部X線(レントゲン)撮影や大腸内視鏡検査を行うのが一般的です。
X線撮影では、腸内にガスや便があるかどうかを調べることができます。大腸内視鏡検査では、大腸メラノーシスの有無やポリープ、大腸がん、下痢の症状があれば、クローン病や潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患があるかないかも調べることができます。
また、重症の便秘で苦しいときはその場で浣腸や摘便(便をかき出すこと)などもやります。
検査で私が推奨しているのは、大腸内視鏡検査です。
大腸内視鏡は、1.4メートルほどの長さのやわらかいチューブ状の器具。これを肛門から大腸の中へスルスルと入れていきます。チューブの先端には超小型の高性能カメラが取り付けられていて、これで撮影した画像を電気信号にかえてテレビモニター画面に送ります。
医師はモニターに映し出された大腸の中を見ながら、病変がないかどうか、くまなく観察します。映像はもちろんカラーで、近年はハイビジョンの内視鏡が開発されるなど、画像の精度はどんどん進歩しています。
一方で大腸内視鏡は「苦痛をともなうつらいもの」というイメージがあるようです。しかし、これには誤解の部分が多いといえます。
熟練していない医師が実施すれば、確かに挿入の際の痛みなどはまぬがれません。しかし、多くの患者さんを診た経験豊富な医師(1万件以上の経験がある)が実施する検査ではそのようなことはありません。
また検査の方法にはいくつかの種類がありますが、私が実施している方法では患者さんに鎮静剤や鎮痛剤を使い、緊張がゆるんでボーッとしている間に検査を行います。ですから、苦痛もなく、あっという間に終わってしまうのです。
もう一点、若い女性の場合「検査のときに下着を脱がなければならないのでは…」という恥ずかしさで大腸内視鏡検査に二の足を踏んでしまう、という声をよく聞きます。
しかし、この点は医師も看護師も十分に心得ており、おしりの部分に穴が開いている検査着などを着用していただき、恥ずかしい思いをすることなく検査を受けていただけるよう、最大限に配慮しています。最近では女医さんを選ぶことができる施設もあるので、探してみるとよいかもしれません。
また、大腸内視鏡検査を受ける前には、腸管内洗浄液や腸管内洗浄用の下剤(約30〜50錠を水分とともに服用)を飲んでいただきます。これで腸に残っている便を輩出し、腸管内をキレイにします。この洗浄液が大量だということで苦痛を訴える人もいますが、昔に比べ飲む量は格段に減りました。今後はもっと少量ですむようなものが開発されると思います。
「つらい」「恥ずかしいから」という理由で検査を受けずにいたために、重篤な病気を見過ごすことは避けていただきたい。ぜひ、大腸内視鏡検査をすすめられたら、不安な点をなんでも医師に相談してください。それだけで多くの不安は解消されるはずです。
なお、大腸内視鏡検査は特に便通の異常がなくても、大腸がんなど、腸の病気の予防として、健診という形で受けることが可能です。
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当院の院長、松生恒夫には、さまざまな著書があります。
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