トップ >> コラム目次 >> 食物繊維とは

大腸の砂漠化とは

「大腸の砂漠化」とは私が考えた言葉で、一般的なものではありません。以前私が書いた原稿の中で考えた表現です。本来大腸の中は泥状の食物残渣(S字結腸で初めて固形便になるので、それ以前は泥状なのです)で多く占められていますが、本来摂取量が少なかったり、発汗量が多かったり、食物繊維摂取量が少なくなったりすると、残渣の量が少なくなってきます。その結果、大腸内の水分量が減るため、本来あるべき水溶性であった泥状の残渣が固形化しやすく、水分不足のためS字結腸へ移行する以前より固形化してしまって、排出しにくくなるのです。

このように残渣が腸内に停滞しやすくなった状態を「腸の砂漠化」と命名してみたのでした。つまり砂漠化の原因としては、とるべき食物や水の減少(食事量の低下などで)が大きく関与しているのです。何となくイメージされるのは、干からびた食物残渣が腸内に蓄積したようなイメージです。

このような状態はどうしておこるのでしょうか。最近見かける例としては、太るとか、顔や手足がむくむなどといった思い込みで水分をあまり摂取しない若い女性や、朝食抜きで昼・夕食のみ、あるいは一日一回しか食事をとらないなどという生活習慣の人に認めやすいのです、最近の国民栄養調査で、二回食の人は20歳代の男性26.5%、女性20.6%に認められました。

食事をあまりとらなければ、本来摂取した水分の90%は小腸で再吸収されてしまうので、大腸まで到達する水分の量がますます減少します。さらに食事摂取量の減少で 食物繊維摂取量が減少することはあきらかです。つまり、水分の少ない干からびたような薄っぺらい食物残渣が一つに固まらずに腸内にひまん性に貯留するような状況です。こうなるとまさに「腸の砂漠化」のイメージが浮かんでくるでしょう。

こういう状況が続くと腸の蠕動運動を亢進させる素材(水分、食物残渣など)が減少するわけですから、腸の蠕動運動が低下したいわゆる「停滞腸」の状況をひきおこしやすくなります。

「停滞腸」という言葉も私が命名したもので、腸の運動が低下したり、停止してしまったような状態をさしたものです。停滞腸になると腹部にガスがたまりやすくなって、腹部膨満感や排便障害、便秘などがおこりやすくなってきます。つまりセカンド・ブレイン(腸神経系)の機能が低下してしまっている状態なのです。

「腸の砂漠化」などという、ちょっと笑える言葉について述べましたが、これが重くなって慢性化してくると事態は深刻になってきます。まずは、女性によく認められる腹部膨満感や便秘、さらには、腹部がポッコリ出てくるようなことです。

出典:松生恒夫院長著書

大腸の健康法

大腸の健康法―病気にならない「リラックス腸」をつくる(平凡社新書370)

出版:平凡社 サイズ:新書判 / 192p   発行年月:2007.04
ストレス社会は、やっぱり大腸に表れる。便秘、過敏性腸症候群、大腸ポリープ、そして死因として上昇を続ける大腸癌…。病気にならないため、そしてなにより日々快適な気分ですごすため、いま大腸の健康が強くもとめられている。ストレス腸からリラックス腸へ!理想の大腸をつくるノウハウのすべて。